2008
・・・途中までですが
沖山じゃないですが、沖山です。
でも、恋愛要素は皆無に近いです・・・。
「山崎が裏切っている。」
そう聞いたとき何のことだか理解できなかった。
くだらない冗談だと鼻で笑って、土方がきれて俺が逃げて、山崎に罪を擦り付ける。
それがいつもの日常だ。
そうすればいい。
だが鼻で笑うには土方の野郎の顔は真剣すぎて何故かその視線に居心地の悪さを感じた。
山崎は裏切ってなんかいない。
そう心に言い聞かせても、どこか引っかかるところがあって否定しきれない。
「近藤さんは、このこと知ってるんですかィ?」
そして口を開き出た言葉は自分の意思に反して、まるでそれを真実だと認めているようで自分で言ったことはといえ信じられなかった。
「いや、知らねえ。あの人にこれはきつすぎる。」
やはり、と思う。
近藤さんは優しすぎるから、真選組と監察1人どちらが大切かという分かりきったことにも悩んで、そして傷つく。
だから、俺たちで近藤さんの知らぬところで山崎を。
殺す。
今まで一緒にやってきたとはいえ、裏切り者を許すわけにはいかない。
情は持つな。
何度もそう心に念じる。
辛いのは俺だけじゃない。
土方の野郎だって平気なはずがない。
俺たちが何とかしなくてはならないのだから。
「それで、山崎はどこの奴なんで……」
「おお!山崎じゃないか!どうしたんだ?トシの部屋の前で。」
俺の言葉は近藤さんの声に遮られた。
だが、そんなことに構っている暇はない。
山崎が土方の部屋の、前に?
次の瞬間、土方はもう刀を抜いていた。
遅れて俺も刀を抜く。
いつもなら土方に遅れをとるはずなどないのに、それは俺が動揺している確かな証拠だ。
迂闊だったと舌打ちする。
山崎は気配を消すことにかけては一流なのだ。
普段からも、訓練のため気配を消して歩いている。
自分達が訓練されているため足音などで察知できると自惚れていた。
その点に関しては山崎のほうが一枚上手なのに。
「お!山崎どこ行くんだ?」
近藤さんの呑気な声がやけに響いた。
どうやら山崎は走るときでさえ気配を消せるらしい。
襖をけり倒すような勢いで外に出れば、呆然とした近藤さんの顔が目に入る。
周りを見渡せば、山崎は屯所の屋根から外に飛び降りているところだった。
さすが監察、足の速さは天下一品といったところか。
「くそ、集まれ!」
そう叫んでいる土方の横を走る。
「土方さん!大勢で行けば山崎に感づかれまさァ!」
遠まわしに自分ひとりで行くと告げ、屋根に飛び上がり山崎が逃げた場所と同じ場所から自分も降りる。
もう山崎の姿は見えなくなっていたが心当たりがあった。
―――ここって、暗いし入り組んでるんで敵から逃げるにも丁度いいんですよ。
山崎が自分とパトロールしていたときに言っていた言葉。
思わず苦しくなった胸を押さえつけながら俺は走った。
しばらくして路地裏に入り込む。
ここからは地道に探すしかないか、と思いながら進めば案外あっさり山崎は見つかった。
細い路地ではあるが真ん中を堂々と歩いている。
まさかこんなにすぐ見つかるとは思っていないのだろうか、だからのんびり歩いているのか。
それとも逃げる気がないのか。
後者はまず違うだろう。
逃げる気がないのなら屯所ですでにつかまっているはずだ。
前者のほうが、まだ妥当だろう。
気づかれないように刀を抜き、山崎へと向ける。
「結構、早かったですね。」
路地裏に山崎の声が響いた。
「気づいてたんですかィ」
「当然ですよ。俺は監察だったんですから」
こちらを向いた山崎が笑う。
月光が似合う奴だな、とふと思った。
「見逃しては…もらえないですね」
「当然でさァ」
山崎が腰の刀に手をかけたのを見て、自分も刀を構えなおす。
「上司に刀を向けるんですねィ」
山崎は答えない。
一瞬置いた後山崎が刀を振り上げた。
それを刀で受け流そうとし、山崎の攻撃を刀で受け止める。
そのまま刀を飛ばそうとした。
すると山崎が懐から短刀を取り出し切りつけてきたので急いで1歩下がる。だが一瞬反応が遅れたためか隊服が多少切られてしまった。
そこを一瞥すると、数歩下がった山崎に視線を向けた。
「ずいぶんと、強くなったようですねィ」
「そうですか?」
いくら、今自分が動揺していようと山崎に負けるはずなどない。
一瞬で勝負がつくと思っていた。
しかし、思った以上に苦戦を強いられている。
それはつまり。
―――こいつ、本来の実力隠してましたねィ
ということである。
かといって負ける気はしない、自分が勝つのも時間の問題だ。
そう思っていたのに。
「そこまででござる。」
路地の影から何者かが出てくる。
月光に照らされ、その姿があらわになる。
「万斉さん!」
指名手配書で見たばかりのため、まだ記憶に新しい。
河上万斉
鬼兵隊か、と内心で毒づく。
かなりの手足れだと聞いている、これはやっかいだなと思う。
決して表情には出しはしないが。
「山崎殿、ちょっと眠っていてくだされ。」
河上はそう言うと遠慮なしに無防備な山崎の腹に拳を叩き込んだ。
思わず斬りかかりそうになったが山崎は敵だということを思い出し、踏みとどまった。
そして山崎と河上の会話を思い出す。
山崎は万斉さん、といっていた。
親しいということだろう。
「山崎は鬼兵隊なんですかィ?」
「そうッス」
その疑問には上から答えがあった。
なんか、すいません